J-REITが投資する不動産の特徴を用途別に比較
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現在J-REITが投資対象にしている不動産を用途別に分類すると、
- オフィスビル(事務所)
- 住居(レジデンス)
- 商業施設
- ホテル(宿泊施設)
- 物流施設(ロジスティクス)
- ヘルスケア施設(高齢者施設・医療施設)
の6タイプに分けることができます。
ここではこの6タイプの不動産について、それぞれの特徴を比較していきましょう。
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オフィスビル(事務所)の特徴
- J-REITの投資対象の中で一番多い用途
- 景気変動の影響を受けやすい
- 契約期間が短い
- 収益性は高いが不安定
用途別で見て、現在J-REITが最も多く投資している不動産がオフィスビルです。
オフィスビルは、景気変動の影響を受けやすいのが特徴。
景気が良ければオフィスを借りたい会社が増えたり、広い物件や立地の良い物件など条件の良い事務所に移転する企業が増えるためオフィスの需要が高まります。
そうなれば不動産価格が上昇し、賃料の値上げも可能になるためJ-REIT自体の資産価値も上昇します。
逆に景気が悪くなれば、企業業績の低迷や人員削減により退去するテナントが増えたり、狭い物件や賃料が安い物件に移転するなどオフィスの需要が減っていきます。
すると不動産価格は下落し、賃料も値下げせざるを得なくなるためJ-REITの資産価値も下落します。
また、オフィスビルの契約期間は商業施設や物流施設に比べると短いので、それだけ空室率の変化も起こりやすいという性質があります。
このように、オフィスビルに投資するJ-REITは景気変動や契約期間が短いというリスクがつきまといますが、借り主が法人であるため収益性が高いというメリットもあります。
住居(レジデンス)の特徴
- 景気に左右されにくい
- 契約期間が長い
- 収益性は低いが安定
オフィスビルが景気変動の影響を受けやすいのに対し、住居(レジデンス)は、景気に左右されにくい性質を持っています。
景気の良し悪しを理由に住居の引っ越しをする人ってあまりいませんし、2~3年ごとに引っ越しを繰り返す人も少ないはず。
つまり住居を借りる人の主な特性として、景気動向に関係なく長期で借りてくれる場合が多いわけです。
また、賃料(家賃)に関しても景気の変化によって変動することはあまりなく、あったとしてもゆるやかです。
このような特徴から、住居に投資するJ-REITは比較的収益が安定していますが、借り主が個人であるため基本的に収益性は低めになります。
商業施設の特徴
- 契約期間が長い
- 収益の安定性が高い
- テナントの集客力がJ-REITの評価に影響
J-REITが投資する主な商業施設は、都市部の百貨店やブランド店、郊外の大型ショッピングモールや総合スーパーマーケットなどになります。
オフィスビルなどに比べて契約期間が長く、10年~20年といった長期契約であるのが特徴。そのため収益の安定性が比較的高いといえます。
商業施設は主に「都市型商業施設」と「郊外型商業施設」の2つのタイプに分類されます。
都市型商業施設とは、主要都市の中心的商業エリアやターミナル駅に隣接する好立地の商業施設です。当然ながら競争力が高い不動産であり賃料も高く、テナントが退去しても新たな借り手が見つかりやすいというメリットがあります。
一方、郊外型商業施設は、郊外にあるショッピングモールやスーパーマーケットなどです。都市型に比べて土地価格が安い分、実質利回り(NOI利回り)が高くなる傾向にあります。
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また、都市型に比べて契約期間は長めですが、主要テナントが契約更新しなかった場合、新たなテナントがなかなか見つからない可能性もあります。そうなればJ-REITの収益悪化にもつながってきます。
つまり商業施設の場合、立地や築年数といった不動産自体の価値だけでなく、入居するテナントの集客力もJ-REITの評価に影響してくるわけです。
ホテル(宿泊施設)の特徴
- 外国人観光客の増加が追い風
- 景気の影響を受けやすい
- 季節・災害などの影響を受けやすい
ここ数年のインバウンド(外国人観光客)の急増によるホテルの空室不足や、2020年に開催される東京オリンピックへ向けてのホテルの建設ラッシュなどが追い風となり、大きな注目を集めているのがホテルへの投資をするJ-REITです。
J-REITが投資するホテルは主に「フルサービスホテル」「リゾートホテル」「宿泊特化型ホテル」の3つのタイプに分類されます。
フルサービスホテルとは、宿泊施設だけでなく、結婚式場や宴会場、会議室などを兼ね備えた多目的ホテルです。リゾートホテルは、その名の通りリゾート地(観光地)にある観光ホテルや旅館のこと。宿泊特化型ホテルは、都市部を中心としたビジネスホテルなどにあたります。
宿泊という用途の不動産の収益は、景気や季節、災害、周辺エリアの観光資源、外国人観光客数など様々な要因と密接に関係しています。
そのため、他の用途の不動産に比べて収益の安定性が低く、良くも悪くもブレ幅が大きいのが特徴です。
特に大きなリスク要因になるのが地震です。阪神大震災や東日本大震災クラスの大震災が起こると外国人観光客が激減し、ホテルの利用客も大幅に減少することが予測されます。
とは言え、短期~中期的にはさらなるホテル需要の増加が確実視されているため、ホテルへ投資するJ-REITへの期待は高まっているのが現状です。
物流施設(ロジスティクス)の特徴
- ネット通販市場の拡大が追い風
- 不動産の取得コストが低い
- 契約期間が長い
- 収益の安定性が高い
日々の暮らしの中であらゆるモノが輸送され顧客のもとに届けられていますが、そんなモノの輸送拠点となる倉庫や物流センターなどの物流施設にもJ-REITは投資しています。
J-REITが投資する物流施設は主に「シングルテナント型(BTS※Build To Suitの略称)」「マルチテナント型」の2つのタイプに分類されます。
シングルテナント型とは、特定の企業の要望に合わせて作られるオーダーメイドタイプの物流施設です。基本的に多額の設備投資ができる優良企業と長期にわたって契約されるので、安定した収益が見込めますが、1つの物流施設に対する分散投資効果は低くなります。
一方マルチテナント型の物流施設は、複数の企業が入居することを考慮した汎用性の高い作りになっているのが特徴。シングルテナント型に比べると賃貸借契約期間は短くなりますが、複数のテナントが入るため退去に伴うリスクは分散されます。
物流施設は他の用途の不動産に比べると、入居テナントとの賃貸借契約期間が長く入れ替わり頻度が低いため、安定した収益が見込めるというメリットがあります。
また、物流施設は建設コストや立地エリアの地価が安いため、J-REITが不動産を取得する際のコストも低く抑えられます。
オフィスや商業施設、ホテルなどは建設コストも高く、地価が高い主要都市の中心部に立地している物件がほとんどですからね。それに比べると低い取得費で長期安定収益が見込める物流施設は、不動産投資においてメリットが多いと言えるでしょう。
ここ数年、amazonや楽天市場をはじめとしたEコマース市場(ネット通販市場)の拡大によって物流個数が大幅に増加しており、それに伴って物流施設の利用ニーズも急拡大しています。
これらの理由から、用途別で比較すると物流施設投資に特化したJ-REITは現状かなり人気が高く、投資口価格はどれも高値圏で推移しています。
そのため利回り的には“投資妙味は低い”というのが現状です。
ヘルスケア施設(高齢者施設・医療施設)の特徴
J-REITの新たな投資先として徐々に増えてきているのが、ヘルスケア施設と呼ばれる高齢者施設や医療施設です。
J-REITが投資するヘルスケア施設は主に「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「病院等医療関連施設」の3つのタイプに分類されます。
有料老人ホームは、健康な高齢者を対象とした施設から介護を必要とする高齢者を対象とした施設まで様々なタイプがあります。
サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者が暮らしやすいよう配慮して作られたマンションで、必要に応じて介護サービスも受けられる集合住宅のこと。
そして高齢者向け施設だけでなく病院などの医療関連施設を含めてヘルスケア施設と呼ばれています。
投資対象という角度から見たヘルスケア施設は、賃料固定の長期賃貸借契約が中心であることや景気との関連性が低いことから、比較的安定した賃料収入が得られる投資先といえます。
また、比較的地価の安い場所が投資対象エリアであることもポイント。特に有料老人ホームは提供するサービスの性質上、交通の利便性や都市機能があまり重要ではないためオフィスビルや住居に比べると不動産取得コストは低くなります。
ヘルスケアREITにはこのようなメリットがある反面、ヘルスケア施設特有のリスクも少なくありません。
ヘルスケア施設は、オペレーターといわれる事業者がその施設を借ります。オペレーターは借りた施設を使って高齢者向けサービス等を行い、施設利用者が払う利用料や国から受け取った介護報酬から賃料を支払います。
そのため、オペレーターの事業運営能力や介護報酬制度の改定といった要因にJ-REITの評価や収益が大きく影響してくるのです。
さらに介護業界は介護福祉士の人材不足や低賃金問題、社会保障財政問題など様々な社会問題を抱えており、ヘルスケアREIT投資に対する不安材料にもつながっています。
ヘルスケアREITに投資する際はこれらの点に留意する必要があるでしょう。
用途によって異なる特性を踏まえてJ-REITのポートフォリオを構築しよう
このように、J-REITが投資する不動産は、その用途によってメリット・デメリットやリスク要因が異なります。この特性の違いを踏まえた上で自分が目指すポートフォリオを構築していくことが重要です。
とは言え、J-REIT投資がはじめての方は自分が目指すポートフォリオなんてわからないはず。そんな方のために各用途別にみた投資比率の目安を最後にアドバイスしておきましょう。
不動産の用途 | 投資比率の目安 |
オフィスビル | 30~40% |
住居 | 20~30% |
商業施設 | 10~15% |
ホテル | 10~15% |
物流施設 | 10~15% |
ヘルスケア | 0~5% |
上記の投資割合をベース(参考)にしながら時間をかけて徐々に投資口を増やしていけば、リスクを抑えつつ長期安定収入が得られるバランスの良いポートフォリオが構築できるのではないかと思います。
ちなみに私は上記の目安に比べて、ホテルと物流施設への投資比率(投資額)が多めです。逆に商業施設の投資割合は低めで、ヘルスケアに関してはまったく投資していません。
このあたりの投資判断は人それぞれ異なるので一概にどれが正しいということはありません。
また、投資口価格や利回り、スポンサーなど様々な判断材料も関係してくるので、あくまでも目安程度にとらえておくと良いでしょう。